2014年5月18日日曜日

メラトニンについて(2014年5月)

今回、メラトニンのパンフレットの改訂をおこなうことになりました。
当クリニックでは、メラトニンも積極的に不妊治療に使用しているのですが、この機会に、メラトニンについて再度整理をしてみました。
改めて調査、勉強してみますと、非常におもしろいホルモンですね。すでに私も飲んでいるのですが、不妊症にとどまらず、アンチエイジングにも積極的に使用する価値はありそうです。

メラトニンとは?
脳の松果体から分泌されるホルモンで、夜に高くなり、日内リズムや睡眠と関連し、リラックスさせる作用があります。アンチエイジングや不眠症、時差ぼけの解消にも利用されます。
アメリカでは、メラトニンはサプリメントとして市販されていますが、ホルモン剤なので日本では市販されていません。当クリニックでも、信頼できるところを通じて輸入して使用しています。

用法用量
日本人には1日1~3mgが適当なようです。翌日にふらつきや頭痛がある場合には減量する方が良いでしょう。
就寝30分~1時間前(または午後10時頃)の服用です。

注意事項
①妊娠中または授乳中、14歳未満の方は服用しない。
これは「危険」と言うよりも、「はっきりしていない」という理由のようです。また、若年者は十分メラトニンが分泌されているから必要ないということでしょう。
②夜以外には使用しない。
昼に使用すると、日内リズムがむしろ崩れてしまうからです。
③服用後に車の運転や機械の操作などをしない。
服用すると眠くなりますから、車の運転や機械の操縦は危険です。

副作用
副作用が皆さん気になるところでしょう。
しかし、調べた限りにおいては、特に問題になる副作用は無いようです。また、一部の睡眠薬のような、依存性も無いようですね。
ただし、翌朝にふらつきや頭痛が残る場合には減量した方が良いでしょう。効果は個々人で異なります。
一方、ひどいアレルギー症状,自己免疫疾患の方 、リンパ腫,白血病等免疫系にガン症状のある方は、使用を避けるようにと記載されていることもあります。免疫機構を刺激し症状を悪化させる恐れがあるからだとの理由です。ただし、その報告は調べた限りでは見当たりませんでした。これは、メラトニンが免疫系をアップさせるから、自己免疫疾患を悪化させる可能性があるとの「推測」によるものかもしれません。
確認はしていませんが、「オランダで、1日75mgのメラトニンを1400人の女性に最高で4年間投与したところ、健康を害するような結果はみられませんでした。FDA(日本の厚労省のような薬品管理局)は、メラトニンが米国内で一般に発売されて2年以上経った段階で、懸念すべき副作用は1件も報告されていないと発表」という情報もありました。 

メラトニンと不妊治療
不妊治療では、抗酸化作用やミトコンドリアの影響が期待され、卵胞内で卵子を保護し、卵子の質の改善(変性卵の減少)や、受精率・妊娠率の上昇が報告されています。
メラトニンは、卵胞液内にも認められて、卵子を保護していると考えられています。2013年の生殖医学会でも、メラトニンの投与で、採卵率、成熟卵、受精率の上昇を認めて、妊娠率は2倍になったとの報告がされました。(採卵率40%未満、体外受精での受精率35%未満、ICSIでの受精率40%未満の方が主な対象でした)
今後も、卵子の質が不良の方、未熟卵が多い方、受精率が低い方には、積極的に使用していきたいと思います。
体外受精の場合には、1~3ヶ月前から、採卵までの服用です。

アンチエイジングとメラトニン
今回は、アンチエイジング、認知症の予防、発がん抑制などの不妊治療以外の事も多く学びました。
メラトニンは、核やミトコンドリアのDNA保護作用も持ち、免疫系の活性化、発がん抑制作用、抗老化作用、血中脂質改善作用、うつ症状の改善、肌を若く保つ、などが報告されています。
美肌にも良いそうですよ!!
メラトニンと寿命の関連を示す臨床研究はありませんが、マウスの実験では最長20%も寿命が長くなった報告もあるようです。 男性の年齢による性欲減退にも効果があるようです。

睡眠障害とメラトニン
年齢を重ねるごとにメラトニンの分泌は減り、70歳を超えると、夜間のメラトニンの量は昼間と同じくらい少なくなるそうです。このため、老人は朝が早く、夜中に何度も目が覚めてしまうので、皆さんのご両親が眠りが浅いようならば、メラトニンをお勧めしても良いかもしれませんね。 
中年以降の睡眠障害には非常に効果的と考えられています。まさに私にぴったりのサプリメントですね。
メラトニンはアルコールに溶けやすく、併用すると体内吸収性が良くなり効果が強力になるので、アルコールとの併用は避けた方がよいですね。
 少量のメラトニンは睡眠を促進し,時差ぼけを和らげるので、時差ぼけ予防の薬としても試用されているようです。時差ぼけが発生する海外旅行にも積極的に利用しても良いでしょう。
メラトニンを使用し十分に睡眠をとれたなら,起床時は爽やかで活力に溢れて、気分も良くなると思います。

抗がん作用とメラトニン
最近では、メラトニンがNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性化などの免疫系を活性化し、発ガンを抑える作用などの腫瘍増殖抑制作用、血管新生抑制作用、DNA修復作用もあり、抗腫瘍効果や抗癌剤の毒性を減少させる効果もあることから、抗癌剤治療との併用で、治療成績の向上、生存率の改善、副作用の軽減の報告も数多くあるようです。抗腫瘍効果を目的とした場合の投与量はに20mg/日としている文献が多いとのことです。

神経系疾患とメラトニン
認知症、アルツハイマー、パーキンソン病の予防、症状軽減への効果も報告されています。 まさに私にぴったりかも?
2003年の日本医科大学の試験ではアルツハイマー病患者 にメラトニン3mgの投与で睡眠から覚醒リズムの改善が見られたそうです。また、アルツハイマー病やパーキンソン病は動脈硬化とも関連しているようですが、メラトニンは動脈硬化、生活習慣病などの予防に役立つと考えられています。

ここまで見てきましたら、メラトニンは万能薬のように感じると思います。しかし不妊治療もアンチエイジングも、メラトニンのみで十分な効果が得られるものではありません。一つの手段ではなく、様々な手段を組み合わせて、総合的に対応していくものであることをご理解下さい。
以下の点にはご注意とご理解を頂きたいとお思います。

サプリメントの限界と使用の責任
サプリメントは薬品ではありません。時に、医師の処方した治療薬を服用せずに、ご自身の判断でサプリメントを薬品代わりに摂る方がいらっしゃいますが、これは間違った考えです。サプリメントは「栄養補助食品」であり、治療薬の代わりにはなりません。サプリメントに過剰な期待はしないほうがよいでしょう。
また、しばしば、ご自身で購入されたサプリメントについて、大丈夫かどうかコメントを求められますが、残念ながら医師はコメントは出来ないのです。サプリメントは薬品ではありません。したがって様々な企業が様々なサプリメントを作っているのですが、その品質は保証されているものではありませんし、試験や調査もほとんどされていないのです。薬ではないサプリメントに対しての信頼おけるデータがそもそも無いので、医師も一つ一つの商品に対してコメント出来ないのです。自己購入のサプリメントについては、自己責任での使用になることをご理解下さい。



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