2013年9月17日火曜日

FSHが100でその後妊娠出産、今回2回目の妊娠・卒業となった方

卵巣機能がかなり低いはずなのに、2回卒業となった、私の経験の中でも稀な例をご紹介致します。
5年前、その方は20歳代、生理が不順な状態で、妊娠を希望されて来院されました。初診時FSH90、LH41,エストラジオール<10であり、通常は閉経と判断される状態でした。実際に前医の大学病院でも早発閉経と診断されていました。
本人の希望もあり、半年間は自然にみていました。
半年後、御本人も薬を使用して積極的に治療する事となりました。その時のホルモン値は、LH36,FSH100、E2<10、DHEAs123、AMH1.3pM(今の基準では0.15位)と、FSH・E2上は閉経ですが、AMHではまだわずかに卵子があるとも考えられます。
ジュリナによるカウフマン療法、DHEAの補充で経過観察。
1回目体外受精 HMGアンタゴニストで2個採卵するも受精せず。
2回目・3回目自然周期で採卵できず。
4回目・5回目、自然周期で1個採卵するもICSIでも授精せず。
6回目自然周期で採卵できず。
7回目自然周期、1個採卵、ICSIで授精・4細胞期の初期胚移植(胚移植は初回)で妊娠出産されました。

第2子を希望されて来院。LH29、FSH49、AMH<0.1
1回目 自然周期で1個採卵、ICSIで授精せず。
2回目、3回目、自然周期で採卵できず。
4回目HMGアンタゴニスト法で、1個採卵、ICSIで授精、4細胞の初期胚移植(産後初めての胚移植)で妊娠・胎児心拍を確認の後、卒業となりました。

この方はホルモン上は早発閉経でしたが、不順ながらも生理はありましたので、まだ排卵自体はあったと考えられます。ホルモンの検査結果は、万能・絶対ではありませんね。幸運にも、奇跡的に、少ないながらも卵子が残っていたのでしょう。
一方、自然周期では、採卵できない、授精しない、ことも多く、やはり半分はキャンセルになるのですね。自然周期、マイルドな周期の場合には、1回1回でのキャンセルも織り込んで考えていた方が良いでしょう。
この方は非常に幸運でしたが、検査結果のみで判断するのではなく、妊娠までは、総合的に判断する必要性を再度、実感しました。

2013年9月16日月曜日

卵管水腫切除が妊娠に繋がった方(重症の卵管水腫は着床を妨げます)

両側の重症の卵管水腫があり、4回胚移植をしても妊娠しなかった方が、卵管を切除して1回目の胚移植で妊娠された例がありました。卵管水腫の悪影響と卵管切除の有効性を感じた例ですのでご紹介致します。
30歳前の方で、クラミジア感染によると考えられる、重症の両側の卵管水腫を持つ方に、体外受精で新鮮胚移植1回、凍結胚盤胞移植を3回おこないましたが妊娠されませんでした。超音波検査で確認できる卵管水腫は重症と考えられます。重症の卵管水腫があると、体外受精でも妊娠率は1/2~1/3に低下します。採卵時にこの水腫の内容液を吸引除去することで、ある程度の妊娠率の改善を期待は出来るとされます。この方も採卵時に両側から10mlの卵管内溶液を吸引除去しました。また3回目の凍結胚移植の2日前にも20mlの卵管水腫内容液を吸引しました。しかし、4回の胚移植で妊娠されなかったのです。
御本人と相談して、腹腔鏡で卵管水腫の片側の卵管切除と、対側の卵管切断(片方は癒着が強く切除できなかったので子宮内腔との連絡を着れば良いので切断したのみ)をおこないました。そして胚移植をすると、術後初回の凍結胚盤胞移植で妊娠されました。

今回は、卵管水腫がある場合の手術の有効性を実感した例です。
超音波で確認できる重症の卵管水腫があって、卵管水腫内容液を吸引してもなかなか妊娠されない反復不成功の場合には、手術を考慮することも選択肢と考えてみては如何でしょうか。
単に体外受精のみをおこなっていても妊娠に至らない場合は良くあります。特に反復不成功の場合には妊娠までは総合的に考えての治療方針を考える事を今後も追求していきたいと思います。

2013年9月9日月曜日

皆さんの妊娠は私にとっても元気の源なのです!

最近、久しぶりに1日に妊娠数が11名と、10名を超えました。当クリニックの1日の平均妊娠数は4人前後なのですが、このように多くの方が妊娠されると私も元気が出るのです。一方、妊娠反応が出ないと私もがっくりきます。陰性の判定が多いと気持ちも上昇しません。
医師としては、感情の起伏を押さえて、冷静に診療を進めるべきなのかもしれません。ですが、皆さんの求める方向と、私の元気が出る方向は一致しているのですね。しばしば感情が露出してしまうことはご容赦を!
前の2施設で、5回の顕微授精を受けた40歳の方に、体外受精の準備として、卵管造影検査と子宮鏡をして、当クリニックのでの1回目の人工授精をしましたが、これで妊娠されました。当クリニックでも、この方は体外受精が第一選択と認識していますが、やはり、体外受精のみでなく、少しでも可能性を追求する意義も感じます。体外受精を受けている方も、可能性があるならば、体外受精と並行して、それ以外の可能性も併せて追求してみては如何でしょうか。
本日、英会話での診療を必要としましたが、語学の才能がない私には、スマートな英会話は出来ないのです。いつも以上にテンションを上げて、本日も「微笑み返し」と「気合い系の英会話」でまくし立てて終わりました。直後は、テンションが下がった脱力感と、その場を乗り切った達成感と、語学の才能の貧弱さへの劣等感、の混じり合った複雑な表情であろう自分を感じるのです。(また余計な事を言ってしまった)

2013年9月8日日曜日

卵巣機能低下に対する対処法 日本IVF学会参加報告(1)

本日、日本IVF学会に参加してきました。
今回は、「AgingとART」という非常に興味のある内容です。
特に、卵巣機能の低下に対する対処法についての、様々な先生方の工夫が勉強になりました。



非常にすっきりした話題として「アンチエイジングと不妊治療は同一線上にある」と、明言した講演を聴き、当クリニックでも進めている方向性が間違いでないことを確信しました。
特に、食後血糖と妊娠率、アンチエイジング(不妊・加齢・癌・美肌は、同じ原因なのです)は密接に関連しています。採卵数の少ない方、卵子の質の良くない方は積極的に糖負荷検査やコレステロールの検査などをお勧め致します。糖尿病の薬も積極的に使用しても良いようです。

<豆知識>
通常は、卵子の99.9%は閉鎖し排卵まで行くのは0.1%以下です。卵子の有効利用を考えましょう。「自然排卵が最も良い」とは限りません。出来るだけ若いうちの卵子を利用・保存しておくことも有効な選択肢と考えては如何でしょうか。
最終妊娠能力時期と閉経(50歳前後)には、9年程度の差があります。「生理があれば妊娠能力がある」のではありません。
一方、AMH<0.1でも、卵子がないわけではありません。また数千個は残っているのです。「AMH<0.1では妊娠できない」のではなく、「残されている時間は少ないですが、急いで治療しましょう」と考えて下さい。

学会に参加して、新しい知識を仕入れると、今直面している難しい不妊症の方にすぐに試してみようという元気が出ます。
明日からもまた一緒にがんばっていきましょう。

2013年9月7日土曜日

祝 妊娠1万人達成のご報告

1ヶ月半のご無沙汰でした。皆さん、お変わりがございませんでしょうか。

今年の夏は、異常な暑さでした。公式には私は「夏ばて」と雑用でブログを更新でませんでした。決して、「余計な事を書くのではなく、皆さんの役に立つものを書きなさい」と言われ、ネタが尽きたから休んでいたのではありませんよ~。(と、心の叫び?・・・これも余計な事でした)

長らく空白であった間も、多くの方がブログを見て下さり、心より御礼申し上げます。

この夏にも、様々な出来事、研修会、学びの場、出会いがありました。

また、皆さんのお役に立てる情報を心がけていきたいと思います。

 

さて、皆さんに非常にうれしいご報告をさせて頂きます。

2013年9月2日、クリニック開院後、妊娠された方が10,000人(例)に到達致しました。

この結果は、様々な方に支えられて達成されたものだと思います。ご協力頂いた方々に、心より御礼申し上げます。

  1999年に千葉市に開院して14年目ですが、一つの大きな目標に到達したと思います。

開院時には想像していなかった数字ですが、クリニックを開院し、スタッフと協力しておこなった診療、歩んできた年月、を改めて実感致しました。この地で少しは社会に貢献できていれば幸いです。

これからも、スタッフとともに、気持ちも新たに、今まで以上に充実した診療を心がけてゆきたいと考えています。

皆さん!一緒に、またがんばっていきましょう。