2012年11月27日火曜日

母体血液検査によるダウン症検査(米国産婦人科学会見解転載)

 

アメリカの産婦人科学会が、ダウン症の診断などに役立つ、母体の血液検査での出生前検査についての見解を出したとのメールがありましたので、転載致します。

 

 米国産科婦人科学会(ACOG)は11月19日、無細胞胎児DNA(cffDNA)による血液検査によるトリソミーの出生前診断について委員会見解を発表した。検査の精度の高さを認めた上で、使用は高リスクの女性に限るべきであると説明している。

 cffDNAによる検査は13番、18番、21番のそれぞれの染色体のトリソミーを検出することができる。妊娠10週目から検査可能。結果が1週間で出る。

 学会はcffDNA検査の欠点として、3疾患の検査にしか対応していない点、確定診断には羊水穿刺や絨毛採取といった侵襲的な検査を必要とする点を挙げた。

 その上で、検査は、35歳以上の妊婦、トリソミーの子を産んだことのある女性、超音波検査で異常を確認されたケースに限るべきと指摘。低リスクの女性、複数の子を産んだことのある女性には使うべきではないと強調した。

 

つまり、この検査は3つのトリソミー(3倍体)しか診断できないのです。一方、羊水検査では、染色体分析はすべておこなう事が出来ます。

日本では、現在委員会が開かれており、試験的に血液による検査がおこなわれ始めようとしています。実際には受けるまでには、もう少し時間がかかりますが、血液検査は、羊水染色体分析に完全に取って代わるものではないことも知っておくべきでしょう。

 

無精子症の方へのICSIの威力(クラインフェルター妊娠例)

顕微授精が行えるようになって、無精子症の方へのICSIの威力には、本当に感心させられます。
ご主人がクラインフェルター症候群で無精子症の方に、TESE(精巣精子採取)をおこない、精子が得られたので精子を凍結保存しました。その後、顕微授精をおこない、ひとりめ出産。今回、ふたりめの挑戦で、やはり凍結していた精子を用いてICSIを行い、妊娠/卒業されました。
顕微授精が出来ない時代には、決して得られないであろう妊娠/出産を顕微授精は可能にしたのです。
生殖医学に関われている自分の存在の意義を実感できる例でした。
今後も皆さんと喜びを共有できることを目指して、またがんばれそうです。
風邪を引き、体調がすぐれなかった1ヶ月ですが、皆さんもお体を大切に!!

レーザー筋腫核出術後の困難と努力

1ヶ月のご無沙汰でした。この間、風邪を引き、なかなか体調が戻らず、毎日の診療で精一杯であり、ブログを更新することが出来ませんでした。やっと、体調も戻ってきましたので、皆さんのご参考になる情報提供を再開致します。
この間、レーザーによる子宮筋腫核出術後に子宮筋層が薄くなったために、妊娠・出産が難しく、危険であるとされた方が来院し、妊娠/卒業されました。
皆さんは、「レーザーによる子宮筋腫核出術は癒着が少なく、きれいな手術が可能である」というような情報をお聞きになったことはあるでしょうか。なかには、自費でレーザーによる子宮筋腫核出術をおこなっているとこともあるようです。
私のクリニックに来られた方は、レーザーによる子宮筋腫核出術(自費)をうけて、子宮筋層が非常に薄くなり、妊娠/出産が難しく危険であると診断されて、3~4件目で来られた方でした。
当方からも大病院にもコンサルトし、ご本人もいろいろ調査して、茨城の病院で子宮形成術を受け、その上で当クリニックで体外受精を受けて妊娠、その後、子宮破裂の危険性もありましたが、何とか無事に帝王切開をうけて、お子さんを授かりました。今年、二人目をご希望し、凍結胚移植をおこない、再度妊娠されて卒業されました。以前よりもリスクは高いのですが無事な経過と出産をお祈りします。この方の妊娠・出産までの行程には、多くの信頼おける医師や施設が関与し、それぞれの立場で最高の医療技術がまとまって、妊娠/出産に至ったのです。この方の努力、多くの医師の方々の努力に本当に感謝し、私自身も力づけられました。
さて、ここで、レーザーと子宮筋腫核出術についてお話し致します。
レーザーによる切開や凝固は確かに癒着を少なくする手段の一つです。ただし、開腹しての子宮筋腫核出術にたいしては、その利点はあまりありません。通常の電気メスによる筋腫核出術で問題はほとんどないのです。実際にはその術者の腕によるでしょう。したがって、自費で、レーザーの子宮筋腫核出術をうけるのはほとんどメリットはないと考えた方が良いでしょう。ただし、腹腔鏡でレーザーを使用しての筋腫核出術はまだメリットはあり得ます。
この方のように、ある施設でレーザーによる筋腫核出術を受けて、ひどい癒着や子宮自体がほとんどなくなっていた方も何人かいらっしゃいました。術前の状態が分からないので簡単に手術自体の是非は言えませんが、やはりこのような手術を受ける前に、信頼の置ける施設でセカンドオピニオンを受けることも考慮されても良いでしょう。
レーザー自体は様々な可能性を持ちますが、この方のような例もご参考にされて下さい。