2011年12月16日金曜日

人工授精のタイミングと排卵、および人工授精の成績と自然妊娠率

本日、人工授精の論文をよみ、また診療をしていて皆さんの人工授精に対しての2つの誤解に気付きました。
1)排卵後の人工授精は成績が悪いのか?または、人工授精は排卵前の方がよいのか?
答えは「いいえ」です。人工授精は排卵前の方が成績がよいとは決まっておりません。
本日読んだ論文にも、実際には「排卵直後」の方が排卵前よりも妊娠率が高い成績でした。この論文ではHCGを投与して36±2時間後に人工授精をおこなっており、排卵直後である明確な条件でした。1回目の人工授精で排卵前の場合には、翌日の人工授精をおこなうことで妊娠率はさらに上昇しました。当クリニックでも、ご希望の方には連日人工授精をお受けしていますが、その有効性が指示される結果でした。
排卵後は人工授精をキャンセルする方が時々いらっしゃいますが、排卵24時間以内ならば人工授精は有効なのです。当クリニックでも排卵後の人工授精で妊娠されている方は珍しくありません。実際には、いつ排卵したか、排卵直後なのか、がわかりにくいことはしばしばありますが、前日の超音波検査で卵胞があり、翌朝の人工受精時に排卵していた場合には、むしろ妊娠率は高くなることも期待できるのです。排卵後であっても、24時間以内の排卵が推測されるならば、人工授精は有効なのです。

2)人工授精の妊娠率は、自然妊娠とほぼ同じなので、人工授精は意味がないのではないか?人工授精をとばして体外受精をするべきではないか?

人工授精の妊娠率は5~10%、自然妊娠する確率はおよそ10%であり、同じと考える意見がインターネットなどで散見されるようです。しかしこれは正しいとは言えません。「自然妊娠する率は、主に不妊症でない方が自然妊娠する確率」であり、人工授精は、「主に精子が少ない方が対象であり、妊娠されてないカップルが人工授精で妊娠する確率」なのです。したがって、見た目の妊娠率が同じだから人工授精は意味がないと考えるのは正しいとは言えません。人工授精は簡単におこなえる、コストパーフォーマンスも良い有効な治療の1つなのです。

実際には、判断が難しい場合や迷う場合はしばしばありますが、当クリニックでは皆さんに理由や根拠を説明できない治療はおこなっておりません。治療に疑問がある場合には、スタッフや掲示板にご質問下さい。見た目の妊娠率に振り回されないようにご注意・ご質問下さい。

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